外国語を学ぶことは、多くの人にとって挑戦的です。特に、学習を続けているうちに、勉強量に対して習得速度が遅いと感じる、いわゆるスランプを経験することがあるでしょう。そんなとき、「年齢を重ねてしまったから外国語を習得するのは難しいのでは?」と思ったことはありませんか?私も仕事や趣味で外国語を勉強しているのですが、ネイティブの様に英語を使いこなす同僚や、複数の言語を使いこなす友人を見ると、自分の学習能力に限界があるのではと思うことがあります。
そこで、外国語を学ぶのに適した年齢に関する研究についてご紹介します。
言語学習における臨界期
言語習得には「臨界期」と呼ばれる重要な時期があると言われています。
母国語以外の多言語を「臨界期」までに学ぶことが最も効果的であり、これを過ぎると、言語の習得能力が著しく低下するとされています。この仮説は、多くの言語学的研究で支持されています。
2018年のMITのジョシュアハーツホーン博士による「臨界期」に関する研究(1)によると、他言語学習は10歳までの早い段階に始めると、ネイティブに近い流暢さを習得できる可能性が高いことが示されています。文法習得能力が17〜18歳まで高く保たれることが確認され、その後は低下することが報告されています。
この研究は、早期にを学ぶことは多言語習得に効果的であることを示しております。
大人からの言語学習
一方で、近年の研究では「臨界期」の厳密さが疑問視されています。ケンブリッジ大学のBialystokとKrollの研究(2)は「臨界期」説の妥当性について疑問を呈しています。
この研究では二言語を話すバイリンガルは、年齢を問わず新しい言語を習得可能であるという調査結果に基づいています。このことから言語習得には個々の学習環境や条件が大きく影響することが強調されています。すなわち、早期に第二言語を学んだ場合や、学習環境が豊富である場合には、年齢に関係なく成功する可能性が高いことが示されています。年齢の効果が存在することは認めつつ、これが必ずしも臨界期の存在を示すものではないと主張しています。
以上のことから、年齢が高くなってから外国語を学ぶことは不可能ではないことがわかります。
大人からの言語習得者の多くは、自己管理や学習計画の立案が得意であり、これが効果的な学習を促進する要因となります。
年齢に応じた学習方法
大人が外国語を学ぶ場合、モチベーションの維持や学習環境の整備が重要です。自分に合った教材や学習法を見つけ、積極的に言語に触れることが、習得を効率的にします。特に、言語学習環境(外国語の映画を観る、ネイティブと会話するなど)が効果的です。
また、大人になると、仕事での仕様など、言語を学ぶ目標を明確に持ちやすいため、自分の目的に合わせた学習が進めやすいです。これにより、学習を継続する意欲も高まるでしょう。
結論
外国語を学び始める最適な年齢については、若い頃に始めることが学習効率を高める一方で、大人になってからでも十分に言語習得は可能です。臨界期を意識しながらも、年齢を理由に諦める必要はありません。自分に合った学習方法を見つけ、楽しみながら学び続けることが大切です。
参考文献
- Hartshorne, J. K., Tenenbaum, J. B., & Pinker, S. (2018). A critical period for second language acquisition: Evidence from 2/3 million English speakers. Cognition, 177, 263–277.
- Bialystok, E., & Kroll, J. (2018). Can the critical period be saved? A bilingual perspective. Bilingualism: Language and Cognition, 21.